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2015.03.10 選挙

政策型選挙で勝ち抜く~政策のチカラが選挙を変える、マニフェストスイッチプロジェクト~

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有権者はバランスで判断

大西 私は、任期中に実現させるものと、任期中に着手するものという2つに絞りました。「任期中に実現」というのは、そこに書いた項目を4年の間にそこまで持っていく設計をやりますということです。実現しなければ、次の選挙のときには間違いなくそこを問われるということです。ですから、任期中実現と書いた項目については、自分でも緊張感を持って書きました。
 一方、「任期中着手」は、やりたいけれども、全部を実現させるのは、4年ではとても無理だと考えたものです。例えば、市電ですね。熊本の市電は需要がとても伸びている。マニフェストには、任期中着手として市電の延伸、LRT(ライト・レール・トランジット、次世代型路面電車)化の検討など、さらなる利便性の向上策を検討すると書いています。検討をするための調査を新年度予算に盛り込むよう考えていますが、任期中着手の公約ですから、このマニフェストは実は今年4月に達成です。
 しかし、果たしてそれでいいのか。マニフェストは達成することが目的じゃなくて、市電を延伸してもっと便利に公共交通への誘導を行い、みんなが豊かになれるコンパクトシティをどう実現するかということ。
 マニフェストというのは、あまりぎちぎちに規律密度を高めすぎると、実は崩壊する。一方、緩すぎると従来型の公約と一緒で意味がない。「福祉を充実させます」というのでは緩すぎますよね。そのバランスをしっかり打ち出せる人かどうかというのが、その人が政策を掲げた立候補者としてふさわしいと、有権者が判断できる基準のひとつになるのではないかなと思うんです。

マニフェストを土台に議論を

──皆さんマニフェスト選挙を戦った経験者同士として、また同じ政令市長として、お互いに聞いてみたいことはありますか。
熊谷 では、福田市長が一番力を入れている中学校給食について、川崎市では年間いくらかかりますか。
福田 川崎市は20億円ぐらいですね。
熊谷 千葉市は15億円ぐらいです。ところで、千葉市は小中学校普通教室にエアコンを設置していません。エアコン設置費用は、割り戻すと年間6~8億円ぐらいになります。先ほどの中学校給食が年間15億円。中学校給食というテーマは身近で分かりやすいけれど、意外にいくらかかるかというのは知られていません。エアコンの話が出ると、他市の給食やエアコンの状況と比較しながら、サービスと行政負担の関係を毎回説明しています。
 我々が行政として考える優先順位は、市全体として見た場合の順位ですが、住民一人ひとりにしてみれば、それぞれが一番です。そうなると、行政が全ての人の望みをかなえることは不可能です。そこで、マニフェストを土台に、最終的には有権者同士で優先順位の議論が行われる必要があります。大事なことは、住民同士で優先順位の議論をすることによって、「自分はこれが一番大事だと思っていたけれども、こういうふうな意見もあるんだ」という成熟した議論がなされていくこと。そのために、行政がハブになって材料を提供する。その手段がマニフェストであり、裏付けとなる数字なのです。
 住民同士の中で優先順位の議論ができるようになるというのが我々の目指すべき方向だし、逆にいえばマニフェストはそこまで行かないといけないと思います。
福田 今、川崎市で新しい総合計画をつくっています。計画の最初の段階で、無作為抽出で市民の皆さんにはがきを送り、10代から80代までの男女30人程度に集まってもらいました。川崎市は7区ありますが、各区の検討課題やこれから10年間でどうあるべきかという市民討議をしていただいています。
 最初はあれもこれもというふうになるんですが、市の財政状況などいろいろなお話をしますと、「これって、市に頼むことかな」とだんだん気づき、「だったら、これはいらないね」と、まさに住民の中から優先順位ができてくるのです。この輪を、どんどん大きくしていきたいと思っています。
 このほか、毎月各区を回って、テーマは設けず車座集会もやっています。それぞれ課題を持っている皆さんが手を挙げて話されるのですが、今まで考えてもいなかったような話題に、こんなことが川崎に起こっていたのかと気づきます。いかにそういう情報を共有化できるか。
 例えば、先週行った防災についての市民検討会議では、自助、公助、共助の話を整理していくと、自助と共助がいかに大事かというのを住民自らの議論の中で収れんされて、ほとんど公助のものがなくなっていった。それはすごく感動的でした。

熊谷俊人 千葉市長 × 福田紀彦 川崎市長 × 大西一史 熊本市長

この記事の著者

熊谷俊人 千葉市長 × 福田紀彦 川崎市長 × 大西一史 熊本市長

熊谷俊人 千葉市長 千葉市長、第8回マニフェスト大賞特別賞受賞。1978年生まれ。父の転勤に伴い千葉、奈良、大阪、兵庫に在住。1995年1月阪神・淡路大震災被災。電気・ガス・水道などのライフラインが全て止まり、自衛隊のポンプ車のお世話に。当たり前のようにそこにあったものは誰かがどこかで支えていることを痛感し、この頃から公共を意識する。2001年早稲田大学政治経済学部経済学科卒業、NTTコミュニケーションズ株式会社入社。2006年民主党の市議会議員候補公募に応募、合格。2007年4月千葉市議会議員(稲毛区)に初当選。2009年6月千葉市長選挙に立候補、初当選。2013年5月より2期目。 http://www.kumagai-chiba.jp/ 福田紀彦 川崎市長 川崎市長、2代目マニフェスト大賞実行委員長。1972年生まれ。川崎市立長沢中学校卒業後、父の転勤に伴い米国へ。現地の高校に入学し、学校の授業で政治について先生と生徒、また生徒同士が活発に語り合う光景にカルチャーショックを受ける。アトランタマッキントッシュハイスクール卒業。米国ファーマン大学卒業後、松沢成文衆議院議員(元神奈川県知事)秘書などを務める。2003年神奈川県議会議員(川崎市宮前区)に県議会最年少議員として初当選。2009年10月川崎市長選に挑戦するも2万8,000票差で次点。神奈川県知事秘書、早稲田大学マニフェスト研究所客員研究員を経て、2013年川崎市長選初当選。 http://www.fukuda-norihiko.com/ 大西一史 熊本市長 熊本市長、2代目ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟共同代表。1967年生まれ。1986年3月熊本県立熊本北高等学校卒業。1992年日本大学文理学部心理学科卒業、日商岩井メカトロニクス株式会社入社。1994年11月内閣官房副長官・園田博之代議士秘書を経て、1997年12月熊本県議会議員に初当選(当時最年少)。県議会議員を4期務めるかたわら、2010年3月九州大学大学院法学府公法・社会法学専攻修士課程修了、2014年9月同大学院法学府法政理論専攻博士後期課程単位修得退学。同年11月熊本市長に初当選。 http://www.kazufumi.com/

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