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2016.07.11 政策研究

第1回 「データ」と「理論」に基づく政策づくり

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3 政策プロセス

 以上の議論を踏まえれば、政策立案は「正当性ある目的―手段体系(仮説群)を正統性ある形で構築することを目的としたプロセス」といえるが、政策立案も含めた一連の政策プロセスを示すと図1のようになる。

図1 政策プロセス図1 政策プロセス

 この図を示したのは、各プロセスによってデータを見る視点、活用方法が異なってくるからである。たとえば「①課題認識」であれば、データは経年や他地域との比較などを通じて確認され、課題として認識されていく。また「②政策立案」では、政策が「こうすれば、ああなるであろう」という仮説である以上、あるデータ(政策)とあるデータ(結果)の関係性・因果関係を確認することが必要になる。そして、最後の「④評価」では、目標値を達成しているかどうかをデータで確認するとともに、政策と結果の関係性・因果関係から仮説の正しさを検証することになる。このように、データの活用にあたっては、漠然とデータを扱うのではなく、目的に合わせた使い方をしなければならない。以上が「正当性」に関わる視点である。
 一方の「正統性」を獲得するためにはどうすればよいか。そこにはいくつかの視点がある。1つ目は、政策が立案されるプロセスを公開し、「透明性を確保」していくことである。2つ目は、政策立案プロセスへの市民参加を行うことであるが、パブリックコメントを通じた意見提出のようなものだけでなく、「意思決定に必要なデータ・情報づくりへの関わり(例:スマホアプリを通じた地域課題の可視化等)」や、それこそRESASを活用した政策ワークショップや政策コンテストのようなものもある。様々な方法を用いて、市民と議会とのコミュニケーション回路を築いていく必要がある。そして、何より、議会・議員自身がデータを積極的に活用して、可能な限り客観的な政策立案を行っていくことが重要である。議会・議員が積極的にデータを活用するというスタンスは、政策の正しさ(正当性)以前に、政策決定プロセスの正統性を高めるものである。

4 データとは何か

 次に、政策をつくる上での素材・資源となる「データ」について考えてみたい。そもそも「データ」とは何だろうか。たとえば、国勢調査などの統計はデータであるように思われるが、アンケート結果はデータなのだろうか。アンケート結果の生データはその名前のとおりデータのように感じられるが、では、自由回答の文章がデータかといわれると、それはデータというより情報といった方が正しいようにも思える。データと情報は何が違うのだろうか。ここで参考になるのが、G. Bellingerによって提唱された「データ・情報・知識・知恵」の階層モデル(DIKWモデル)である(6)

図2 DIKWモデル図2 DIKWモデル

 G. Bellingerが提示するこのDIKWモデルは、「データ」と、それを抽象化したものとしての「情報」や「知識」との関係性をモデル化したものであるが、そのモデルでは、〈データ:data〉は「それ自体では意味を持たないシンボル」であって、「データを集合にして意味づけしたもの」である〈情報:information〉とは区別される。さらに、その〈情報:information〉も、「情報の集合を構造化、または他の情報と関連付けることで得られる事実」である〈知識:knowledge〉や、「知識を基に『なぜ』を考えることで得られる、出来事を判断するための価値や理由」である〈知恵:wisdom〉とも区別されている(7)
 さて、しばしば「データを活用した政策立案」という言い方がなされるが、政策立案で活用すべきものは、上記の図2における〈データ〉だけであろうか。そうではないだろう。「データを活用した政策立案」が意味するものは、本来「正しい情報や知識を活用した政策立案」ということであって、それは〈データ〉だけを活用するというものではないはずである。公共政策においても、これまでの研究から、ある程度正しいと判断される「理論」が存在している(例1:人口密度と生産性との相関関係、例2:基盤産業(域外市場産業)と非基盤産業(域内市場産業)との就業者数の比率)。もちろん、理論がその地域に適用可能かどうかは検証されるべきであるが、このような理論を政策立案に活用していくことも、〈データ〉の活用と同様に重要である。そもそも、〈データ〉というものは、解釈・分析を通して、抽象化・理論化されなければ、実際に適用できる知にはならないものでもある。
 以降では、「データ」という単語を使用する場合には図2における〈データ〉を意味するものとして、〈知識〉や〈知恵〉などの抽象的・理論的な情報とは分けて整理したい。

米山知宏(早稲田大学マニフェスト研究所招聘研究員)

この記事の著者

米山知宏(早稲田大学マニフェスト研究所招聘研究員)

早稲田大学マニフェスト研究所招聘研究員。東京工業大学大学院社会工学専攻修了。株式会社三菱総合研究所、東京大学公共政策大学院(客員研究員)を経て現職。日本公共政策学会会員。関心は、オープンガバメント、市民参加、公共政策。
e-mail:kedamatti@gmail.com
Facebook:tomohiro.yoneyama.71

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