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2016.09.12 政策研究

第2回 政策立案におけるRESASの活かし方(上)

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早稲田大学マニフェスト研究所招聘研究員 米山知宏

1 はじめに

 前回の記事では、「『データ』と『理論』に基づく政策づくり」と題して、政策立案の基本的な考え方について整理した。結論を簡単にまとめれば、データを政策立案に活用することが重要だからといって、やみくもにデータを活用することは望ましいものではなく、「適切な情報」を「適切なコストの範囲」で活用していくことが重要ということである。そのためには、専門家の理論や組織内に蓄積された知見など、抽象化された理論(情報)も活用しながら、「理論をデータで検証する」とともに「データから理論をつくっていく」という「データ」と「理論」の相互循環プロセスが不可欠である。
 連載の第2回目は、人口分析と産業分析を素材として、RESASの使い方を整理したい。当然のことながら、RESASだけでは政策立案に必要な全ての情報を把握できるものではなく、他の統計データにも触れながら、データを活用した政策立案について考えていきたい。本稿のタイトルを「RESASの活かし方」としているのはそれが理由である。

2 データ・理論の使い方

 前回の記事でも記載したように、一連の政策プロセスは図1の形で表現できるが、データの活用方法はプロセスによって当然異なってくる。ここでは、①課題認識、②政策立案を対象にデータの見方について整理したい。

図1 政策プロセス図1 政策プロセス

①課題認識
 まずは「課題認識」である。政策立案にあたっては、まず課題=現状を適切に認識する必要があり、これが全てのスタートである。
 このプロセスは「現状認識」と「要因分析」の2つのプロセスに分けることができる。現状を認識した上で、その状況が発生している要因を分析することで、課題を認識することができる。まず、現状認識を行うための基本的なアプローチは「データを比較すること」であるが、そこには、1)地域間比較、2)地域内比較、3)時系列比較などいくつかの視点がある。1)地域間比較は、他の自治体・地域との比較や、それらの地域を含む地域全体の傾向との比較から、当該地域の現状や課題を明らかにしていくアプローチである。比較の対象としては、全国平均との比較、同一都道府県内での比較、人口規模が近い自治体との比較、産業特性が類似している自治体との比較など、こちらもいくつかの視点があるが、いずれを選択するかは、当然のことながら分析の目的による。2)地域内比較では、当該地域内のより細かい地域間(小地域)で比較をし、現状・課題を明らかにしていく。3)時系列比較は、ある対象の経年変化から、現状・課題を明らかにしていくアプローチである。実際の分析時には、たとえば「地域間の比較を時系列で見ていく」など、複数の視点を組み合わせて分析を行っていくことになる。
 さて、このような分析を経て、地域の現状がある程度把握できたとしよう。その次に重要なのは、「そのような現状になっている(課題が生じている)要因は何か?」ということを分析することである。この要因分析を誤ると、いくらコストをかけて政策をつくったとしても課題の解決にはつながらず、その意味で、要因分析は政策立案において最も重要なプロセスといっていい。要因分析を行う上で不可欠な視点は、「(可能な限り)課題の根本的な要因を明らかにすること」である。一つひとつの事象は、複雑に絡み合う諸要因によって引き起こされるものであるが、根本的な要因を把握することなく、誤った要因認識で政策を立案しても本質の解決にはつながらない。
 簡単な例として、「出生数の減少」という事象を挙げることができる。「出生数の減少」については、しばしば「合計特殊出生率の減少が要因である」と簡単に捉えられることが少なくないが、婚外子が少ない日本においては出生数が「女性人口」×「有配偶率」×「有配偶出生率」で近似的に計算できることを踏まえれば(1)、それら3つの要素を別々に見ていくことで、より正確に事象の要因に接近することができる。結論をいえば、当然、地域によって異なる可能性はあるが、出生数の減少を引き起こしている要因は主に「女性人口の減少」と「有配偶率の低下」であり、「有配偶出生率」=「結婚している人が産む子どもの数」は必ずしも低下していない。この事実は、「合計特殊出生率の低下」がイメージさせる「子どもを産む数が減った」という曖昧な印象論ではない要因分析を可能とさせる。
 ここでは、「出生数」を「女性人口」×「有配偶率」×「有配偶出生率」に分解して考える例を記載したが、これもひとつの理論・ロジックである。このような理論があることで、分析の対象が明確となり、事象の要因もより明確に把握することができるようになる。では、このような「理論」をどう構築するか。もちろん、自らデータを分析しゼロから理論を組み立てていくという方法もひとつの方法ではあるが、時間的な制約などを考えれば現実的ではない。やはり、専門家による既存の分析手法・分析結果を参考にすることが有用である。上記の例であれば、「出生数 要因」などのキーワードでインターネットを検索すれば、すぐに分析のヒントとなる理論=分析のフレームワークを見つけることができる。そして、その理論をもとに自地域の実データを適用し分析することで、当該地域の出生数が減少している要因をより具体的にすることができるだろう。
 このように、既存の理論もある程度把握した上で、その理論に基づいて実際のデータで検証をしていくという「理論」と「データ」の相互循環プロセスこそが、物事の要因を明らかにしていく効率的なプロセスである。上記の例では「出生数」を3つの要素に細分化して検討したが、さらに3つの要素を深掘りしていけば、出生数減少の要因をより深く把握することができるだろう。

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米山知宏

この記事の著者

米山知宏

早稲田大学マニフェスト研究所招聘研究員。東京工業大学大学院社会工学専攻修了。株式会社三菱総合研究所、東京大学公共政策大学院(客員研究員)を経て現職。日本公共政策学会会員。関心は、オープンガバメント、市民参加、公共政策。
e-mail:kedamatti@gmail.com
Facebook:tomohiro.yoneyama.71

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