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2016.09.26 政策研究

第3回 政策立案におけるRESASの活かし方(下)

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早稲田大学マニフェスト研究所招聘研究員 米山知宏
 

本稿は、2016年9月12日『議員NAVI』掲載の『第2回 政策立案におけるRESASの活かし方(上)』の続きです。続編の今回はRESASを活用した産業分析の方法を中心に引き続きご解説いただいています。上編はこちらからどうぞ。(編集部)

3.2 産業分析

 次に、「産業」に関する分析を行いたい。産業を見る際に欠かせないのは、地域全体の付加価値をどのように増やしていくか、という視点である。付加価値とは、企業の生産活動によって新たに生み出された価値のことである。それは、生産額から中間投入材の額を減じたものであるから、地域全体として付加価値を考える際には、「地域の生産額を増やす」という視点と「地域全体として見たときの中間投入材(額)を減らす=中間投入材を地域外から調達する額を減らす」という視点から地域の各産業を見ていくことが不可欠である。スーパーなど、地域の居住者を対象とした「域内産業」の規模は人口に比例することから、特に、域外から付加価値を稼げている産業・稼げていない産業は何で、それらはどのような理由によりそうなっているのかということを把握していく必要がある。しかし、これらをある程度の精度をもって確認しようとするならば、本来は、当該地域を対象とした産業連関表を作成する必要がある。産業連関表は、「一定期間(通常1年間)において、財・サービスが各産業部門間でどのように生産され、販売されたかについて、行列(マトリックス)の形で一覧表にとりまとめたもの(8)」である。それは、産業間の相互関係や地域外との移出・移入の状況など、地域の産業構造を把握するのに有用なツールであるが、産業連関表を作成しているのは、都道府県と政令指定都市を除けば、一部の自治体に限られる。そこで活用すべきはRESASである。RESASでは産業連関表ほど詳細ではないが、各産業のお金の流れを把握することができる。以降でそのあたりを中心に見ていきたい。

●地域経済の構造
 図5は、地域経済の構造(資金の流れ)をモデル化したものである。製造業・農業・観光など、地域の外からお金を獲得できる産業(=「域外市場産業」)が地域住民に所得をもたらし、獲得した所得が地域内で消費されることで、小売業・生活関連サービスなどの「域内市場産業」が成立するということを示している。
図5 地域経済の構造図5 地域経済の構造

 もし、域内だけで全ての需要を満たす商品・サービスを提供できる地域が存在するのであれば、域外市場産業は不要となり、図5も右側半分だけで地域経済が循環することになる。しかし、地域内で全ての商品・サービスを提供することは技術的もしくはコスト的に現実的ではなく、一定程度は域外から調達する必要がある。であるならば、域外から調達するための資金をそもそも域外から獲得しなければならず、そのためにも域外市場産業を育成していくことが不可欠なのである。
 また、地域の人口を考える場合にも「域外市場産業」は重要な役割を担っている。「域外市場産業」の従業者数が地域の人口の数を決定しているのである(9)。逆に、「域内市場産業」は、それが域内を対象とした産業であるのだから当然の話ではあるが、地域の人口の数によって結果的に決定される。たとえば、人口が減少すれば域内市場産業は縮小するが、域外市場産業は人口が減少したとしても増やせる可能性があるのである。だからこそ、何よりも域外市場産業を育成していくことを考えなければならない。

●地域のお金の流れの全体像
 それでは、まず、RESASが提供している「地域経済循環図」を見ながら、地域のお金の流れの全体像を確認したい。
図6 地域経済循環図図6 地域経済循環図
 この図は、どこから所得を稼ぎ、その所得をどこに使っているかというお金の流れの概要を把握することができるもので、産業連関表をコンパクトにまとめたものといえる。ここでは、先ほどの人口分析と同様に長野県原村を対象とした地域経済循環図から、当該地域の経済の概況を把握したい。まず、図の真ん中にある「分配(所得)」の項目である。これは、地域で稼いだ所得がどのように分配されているかということを示したものであるが、原村の場合、地域で稼いだ所得の半分近く(グラフの赤い部分)が域外から獲得されたものであることを表している。つまり、原村に居住しているが、原村以外に勤務し、その所得を原村に持ち帰っているということを意味している。続いて、図の右側の「支出」の項目を確認したい。これは、地域で稼いだ所得も含めて、その地域に対する支出がどのような形で行われているかということを表しているグラフである。原村の特徴は、地域外への流出(グラフの白い部分)が多いことである。中でも、「民間消費額」は72億円も地域外へ流出しているが、これは地域の消費需要に対応できるだけの産業が地域に存在せず、域外で消費されてしまっているということを意味している。また、「その他支出」の地域外への流出も大きい。「その他支出」は、RESASによれば「政府支出、地域内産業の移輸出入収支額等」を表しているものであるが、これらについて地域外への流出が多いということは、地域外に対して商品・サービスを移出する以上に地域外から移入している、つまり、地域として貿易赤字状態であるということである。それぞれの具体的な金額については「詳細を見る」というボタンから確認できる。

●域外市場産業は何か?
 このように全体としては貿易赤字状態の原村であるが、地域の外からお金を獲得できている域外市場産業はあるだろうか。ここでは、「移輸出入収支額」と「特化係数」から地域の基幹産業である域外市場産業を明らかにしたい。
 まずは「移輸出入収支額」である。移輸出入収支額とは、域外への移出に伴う収入額から域外からの移入に伴う支出額を差し引いたもので、プラスの産業は域外からお金を獲得している基幹産業(域外市場産業)であることを示している。RESASで、移輸出入収支額を産業別に表示したものが図7である。このグラフは、RESASメニューから「地域経済循環マップ>生産分析」とたどることで確認することができる。
図7 産業別の移輸出入収支額図7 産業別の移輸出入収支額
 図7は「移輸出入収支額」を当該金額が大きい順に表示したものである。なお、産業ごとに2本のグラフが表示されているが、移輸出入収支額は左側のグラフで、右側は地域における生産額の構成割合を表している。2本のグラフのうち左側の移輸出入収支額が大きいのは「農林水産業」、「その他の製造業」、「金属製品」等で、これらが原村の域外市場産業になっていることを確認できる。一方で、グラフの右側の方に「サービス業」があるが、これは「生産額の構成割合」は原村の産業の中で最も高い割合を占めているが、移輸出入収支額はマイナスとなっている。

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米山知宏(早稲田大学マニフェスト研究所招聘研究員)

この記事の著者

米山知宏(早稲田大学マニフェスト研究所招聘研究員)

早稲田大学マニフェスト研究所招聘研究員。東京工業大学大学院社会工学専攻修了。株式会社三菱総合研究所、東京大学公共政策大学院(客員研究員)を経て現職。日本公共政策学会会員。関心は、オープンガバメント、市民参加、公共政策。
e-mail:kedamatti@gmail.com
Facebook:tomohiro.yoneyama.71

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