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2018.09.25 選挙

第9回 投票率向上に立ち上がった若者と子育て世代〜市川市と松戸市〜

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地方自治ジャーナリスト 相川俊英

地方選の“投票者消滅可能性”全国トップの自治体?

 自主財源の乏しさから「3割自治」と揶揄(やゆ)されてきたのが、日本の地方自治体である。自治とは名ばかりで、実質的に財布のひもを握る中央政府のコントロール下に置かれている。国からの地方交付税や補助金、交付金なしでは財政的に立ち行かない自治体ばかりであるからだ。
 そんな日本の地方自治体にもう1つの「3割自治」の危機が迫りつつある。それも自治の根幹を腐らせ、死に至らしめるおそれのある難病だ。投票率の著しい低下である。住民の多くが身近なはずの地方政治にそっぽを向き、首長選や議員選に関心を持たず、持ち得ずにいる。4年に一度の統一地方選での投票率を見ると、低落傾向が鮮明となっている。前回(2015年)の市区町村長選の平均投票率は49.45%で、市区町村議選は48.82%。いずれも過去最低を記録し、有権者の半数ほどが投票所に足を運ばなかったのである。地方政治の空洞化が不気味な勢いで進行しているといってよい。
 中でもより深刻なのが、東京に隣接する千葉県や埼玉県のベッドタウン都市である。千葉都民や埼玉都民と呼ばれる地元意識の希薄な住民が多く、首長選や議員選の投票率は5割に満たないどころか3割台が当たり前といったお寒い状況にある。その代表的な自治体といえるのが、千葉県市川市だ。

市川市役所市川市役所

 市川市の人口は48万7,380人(2018年8月末時点)。江戸川を挟んで東京都と隣接しており、都心から20キロ圏内にある。利便性の高い住宅都市として成長し、2015年に過去最高の人口を記録したほどだ。つまり、市川市は人口減少期にある日本社会において、勢いのある稀有(けう)な地方都市の1つなのだ。
 その反面、市川市は消滅するおそれのあるものを抱え込んでいた。それは一体、何か。人口ではなく、地方選での投票率である。例えば、市長選の投票率はもはや2割台が通常となっていて、3割を上回ったらそれこそ快挙となる(1977年から2013年の過去10回の市長選で1997年の34.82%の1回のみ)。それどころか、1964年には投票率が19.69%と1割台になった。これが過去最低の記録だが、1977年に20.85%、2013年に21.71%をたたき出しており、いつ新記録が出てもおかしくない状況となっている。市議選はそこまでの低投票率とはなっていないものの、こちらも3割台に低迷している。2015年の市議選は前回より1.29ポイント下げて35.13%となり、過去最低だった。首長選と議員選の投票率を総合して判断すると、市川市が地方選投票率の全国ワースト1位といえる。ちなみに、市川市議会(定数42)は政務活動費の不適切使用や議員のわいせつ行為などでメディアをにぎわしており、全国的にその存在を知られている。

選挙に行かず、ものも言わぬ住民たち

 では、大都市部で地方選の投票率がかくも悪化するのは、なぜなのか。本来、身近なはずの首長や議員の選挙に住民が足を運ばない理由は何なのか、その背景を探りたい。
 選挙に行かない住民は全体の半分以上とみられるが、いろいろなタイプで構成されている。1つは、政治行政に全く関心を持たない人たちだ。完全無関心派とでもいうべきか。2つ目は、政治行政に関心がないわけではないが、地元であるとの意識がなくて首長選や議員選には関心を持てない人たち。市川市などではこのタイプが多い。3つ目は、そもそも政治行政をあてにしていないという面々だ。4つ目として、関心がないわけではないが時間的・精神的な余裕がなくてというのが挙げられる。都市部に住む現役世代によく見られる。5つ目は、住民として政治行政により関わりたいが、きっかけや情報、伝手(つて)がなくてという人たちだ。
 これらのうち2から5のタイプは、「誰が当選しても政治、行政は変わらない」とか「自分が棄権しても何ら影響はない」といったことを自分が投票に行かない理由にしているように思える。
 だが、2から5のタイプの人たちが投票に行かない理由は、それだけではない。地方選の場合、候補者の情報があまりにも少なくて「誰を選んだらよいのか判断がつかない」という現実がある。とりわけ候補者が大勢になる議員選では、選ぶに選べない状況に立たされる住民が多い。中身の分からない、見えない商品が目の前にずらりと並べられ、その中から1つ選べとせき立てられるようなものだ。訳が分からなくなり「投票に行くのはもうやめた!」と、さじを投げてしまうのももっともだといえなくもない。こうして選挙が特定の人だけのものとなり、それ以外の住民が距離を置くようになってしまったのである。日本ではどんなに低投票率であっても、当選者は必ず誕生する。投票率が問われて選挙そのものがやり直しとなることはない(首長選では、有効投票総数の4分の1以上の法定得票数を上回る候補者がいなかった場合、再選挙となる)。

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相川俊英(地方自治ジャーナリスト)

この記事の著者

相川俊英(地方自治ジャーナリスト)

地方自治ジャーナリスト。1956年群馬県生まれ。地方自治の取材を四半世紀以上にわたって続ける。2017年3月に長野県飯綱町の寺島前議長を主人公とした著書『地方議会を再生する』(集英社新書)、2018年2月に『清流に殉じた漁協組合長』(コモンズ)を出版した。この他に『奇跡の村 地方は人で再生する』(集英社新書、2015年)『トンデモ地方議員の問題』(ディスカヴァー携書、2014年)など多数。

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