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2019.04.10 政策研究

これからの若者の政治参加に対する期待 〜日本若者協議会の取組みを通して〜

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一般社団法人日本若者協議会代表理事 室橋祐貴

 どうすれば、若者が投票に行くようになるか。

 選挙のたびに、毎回同様の嘆きが聞こえてくる。
 芸能人の選挙啓発ポスター採用や「選挙割」など、様々な対策が行われているが、大きな改善は見られない。
 さらに、首都圏も含めた地方選挙では深刻な「なり手不足」から、無投票選挙が広がっており、投票の機会すら与えられないという民主主義の危機に陥りつつある。
 なぜ、若者は投票に行かないのか。
 2016年10月に総務省が行った18歳〜20歳を対象にした「18歳選挙権に関する意識調査」によると、投票に行かなかった理由として、「選挙にあまり関心がなかったから」が19.4%で2番目の理由になっている(1番目は「今住んでいる市区町村で投票することができなかったから」(21.7%)で、不在者投票制度の周知や手続の簡素化、ネット・電子投票などの対策が求められる)。
 しかし、「選挙」に関心がないからといって、「政治」や「社会」に関心がないわけではない。実際、OECDが2016年に発表したレポートによると、「政治に関心がない」と答えた15歳〜29歳は、OECD平均の26%より少ない11%、31か国中3番目の低さとなっている。
 政治に関心がないどころか、他の先進国と比べても高いのが実態である。

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図1 若者の政治への無関心度

 また、内閣府が2013年に行った「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」結果を見ると、社会への貢献欲は高い一方で、自分が政策決定過程に参加することで社会を変えられるとは思っていない現状が分かる。
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図2 若者の政治参加の現状

 一方、欧米諸国の若者が「変えられる」と思っているのは、具体的に変える方法を知っており、実際に変えてきた事例が積み重なっているからだ。
 誤解を恐れずにいえば、自分の一票だけでは大きく社会を変えることはできない。投票の機会は数年に一度に限られており、数多く存在する有権者の一人でしかないからだ。そして何より、政党の公約や候補者は投票日前に決まるのであって、それらが良くなければ、「投票したい」とも思わない(実際、2013年衆議院選挙後の全国調査では、投票に行かなかった理由として、26.1%が「適当な候補者も政党もなかったから」だと回答、これが一番多い理由になっている)。
 本当に「社会を変えたい」と思ったら、日常的な政治家との意見交換(請願・ロビイング)やデモ、そして実際に自分が政治家になった方が変えられるだろう。
 しかし、日本では「投票」以外の手段について具体的に学ぶ機会はほとんどない。
 政治家と直接話す機会も乏しく、そもそも政治家がどういう活動をしているのか、どんな人たちがやっているのか、知っている若者はほとんどいない。
 政治家への低い信用度が示しているように、政治家のイメージといえば、たまにマスコミが大きく取り上げるスキャンダルや国会で議論が紛糾している場面であり、筆者が代表を務める日本若者協議会の政策議論の場において、政治家の知識量の多さに驚く若者は多い。
 他方、欧米諸国では、子どもの頃から政治参加の様々な手段に関する情報や機会が与えられている。
 例えば、ドイツでは、小学生の頃からデモの手段を学び、選挙前になれば、学校で各党代表者による討論会が行われる。日本では高校生が政治活動を行うことや党員になることはできないが、欧米では高校生から党員になることができ(スウェーデンでは13歳からなれる)、政党や選挙に関わっている。
 ノルウェーなどの「選挙小屋」がある地域では、学校の授業の一環として、「選挙小屋」を訪れ、各政党の候補者やスタッフと話す中で、政党間の違いをまとめるレポート作成などが行われている。
 現在、ヨーロッパでは各国で数万人の中高生が「温暖化対策」を訴えるデモを行っているが、投票以外の政治参加が当たり前に存在しているのは、やはり学ぶ機会があるからだろう。
twitter

スウェーデンの高校生グレタ・トゥーンベリさん(当時15歳)が2018年8月に始めた国会前での座り込みによる抗議活動は、同年代の中学生や高校生たちの共感を集め、欧州全体や豪州に広がっている。

 つまり、若者の政治参加を促すために重要なのは、より多様な政治参加の手法を具体的に学ぶ機会を提供すること、「自分たちが政治に働きかければ、それだけの効果がある」という自信や信頼を育てることであり、そうした機会を増やしていくことだ。

「参加できない」若者の声をどう取り上げるか

 2010年に施行された「子ども・若者育成支援推進法」、2016年の「18歳選挙権」をきっかに、子ども議会や若者議会など、日本でも「投票」以外の手段によって直接的に政策に意見を反映させようという試みが広がりつつある。
 こうした取組みに対し、様々な課題が指摘されているが、その中でも大きな課題だと思うのは、結局子どもや若者を主体者として扱っていない点、そしてリーチの弱さだ。
 前者に関しては、模擬投票や模擬請願などの試みが行われているが、子どもが所属している一番身近なコミュニティ、学校のルール(校則)決めに生徒が関われる機会は少なく、授業内容や学校のあり方に関して本来主体者である生徒が先生や校長、教育委員会に提言をできる機会はほぼない。
 あくまで大人がつくった形式的な、教科書的な場に子ども・若者を参加させているだけであって、それでは自分の影響力を感じることはできないだろう。
 また、政治の世界ではいまだに年功序列が強く残っており、当選回数で役職が決まる風土は若者の感覚とは合わず、若い頃から活躍する場面が少ないのも政治家を志す若者が増えない理由の一つだと思われる。
 東急電鉄(東京急行電鉄)では、20代の若手社員が業務のシステム化を主導し、効率化を大幅に進めたが、今までのような「ミスをしない」方が重要だった時代から、変化に対応することが重要な時代に変わった現代においては、新しい価値観やテクノロジーに強い若手を活用するメリットが大きいのは自明である。
 後者に関しては、若者議会などに参加するのは、一部の「意識高い」層に限られている点だ。
 国政に対して政策提言を行う日本若者協議会でも、各党内や超党派の若者政策推進議員連盟など様々な形で若者が政策立案過程に入り、政治家と協議する機会を提供しているが、それでもやはり参加する層は政治関心が特に強く、首都圏に在住する比較的余裕のある人が多い。
 しかし現実的には、こうした場に来られない人の方が課題を多く抱えており、問題の当事者であることは多い。
 現在、日本若者協議会では「日本版ユース・パーラメント(若者議会)」として、参議院選挙に向けて各党に政策提言を行っており、その際にもなるべく統計的なデータを根拠として扱い、問題の当事者と直接会っているNPOの方などに参加してもらってはいるが、まだまだリーチ力は弱い。
yothparliament  ただそれでも、今まで「被選挙権年齢の引下げ」や「給付型奨学金の拡充」など、様々な提言が公約に反映された実績から、「自分たちが政治家に働きかければ、それだけの効果がある」という自信は得られつつあり、現在約4,000人の会員(54団体)が存在するが、この日本若者協議会の運営を行っている事務局の半数以上は高校生だ。

地方にも若者協議会の設置を

 日本若者協議会はあくまで一民間団体であるが、ヨーロッパ諸国では、国や地方自治体が「若者協議会」を設置している。
 ドイツでは、連邦(日本でいう政府)だけではなく、各地域に若者の意見を集約する若者団体の連合組織(協議会)が設置され、各地域は当然として、それらの声を連邦にまで届ける仕組みが整っている。
 そして、こうした連合組織を連邦や各州が金銭的に支援しており、一定以上の規模、継続性を維持することができている。
筆者が2017年11月に視察に訪れた、ドイツ・ポツダム市にあるブランデンブルク州青少年連合では、常任スタッフが8人存在し(運営には大人もいる)、州の青少年団体約30団体を束ねる。
 驚くべきはその予算だ。この組織に対して、州などが年間約190万ユーロ(約2.5億円)もの予算を支出している。この予算は各若者団体の運営費にも使われており、子ども・若者が地域で活発に活動ができるようになっている。
 これらの根拠になっているのが、ドイツの社会法典第8編 子ども・若者支援法(Child and Youth Service Act:KJHG)だ。
 それによると、参画の原則が下記のように定められている。

・親、子ども・若者、若年成人は市民であり、福祉サービスを受ける権利を有する。
・意思決定過程に参画する権利を有する。
・ 子ども・若者支援法に携わる育成担当者は、親、子ども・若者、若年成人を参画させる義務を負う。
 
 若者議会のように公募で参加者を募るだけでなく、こちらからアプローチして声を集めていく手段が整っていることで、より多様な声を集めることができている。
 日本でも「子ども・若者育成支援推進法」によって、こうした協議会の設置が努力義務になっているが、2015年4月の時点では、82自治体にとどまっている。
 若者の政治参加という意味でも、今後の社会のためにも、こうした子どもや若者の声を聞く機会は重要であり、変化の激しい現代において、新しい視点を取り入れていかなければその地域の衰退は免れない。

いかに大人が子どもや若者を信用するか

 最後に、政治参加を促すに当たって、最も重要なのは、子どもや若者を信用することだ。
 大人が細かく準備し、そこに若者に参加してもらうのではなく、場の設計から決定まで、一緒に考える、若しくは子どもや若者に任せる。
 「政治的中立性」を過度に重視し、いまだに今話題になっている政治的トピックを取り扱いにくい、政治家が学校に入りにくい雰囲気もあるが、必要な情報は与えながら、政治的信条や判断は子どもに任せる。
 ドイツで筆者が「先生が政治的思想を押しつけない対策は何かしているんですか?」と校長に質問したら、そこに同席していた生徒会のメンバーが「先生が特定の方向に誘導しようとしていたら、僕らはそれに気づくし、そうしたら他の先生や親に相談する。だからその心配はない」と言っていたのが非常に印象に残っている。
 子どもや若者を対等に扱い、権限を与える。
 そうした思い切った決断が、大人に求められているのではないだろうか。

室橋祐貴(一般社団法人日本若者協議会代表理事)

この記事の著者

室橋祐貴(一般社団法人日本若者協議会代表理事)

1988年生まれ、一般社団法人日本若者協議会代表理事、慶應義塾大学政策・メディア研究科修士1年。 学生時代からITベンチャーの立ち上げを行い、2015年に若者の声を政策に反映させる「日本若者協議会」を設立、代表理事に就任。各政党に対して若者政策の提言を行い、2016年参院選や2017年衆院選では、主要政党の公約に載せることに成功。2018年5月に発足した、超党派の「若者政策推進議員連盟」立ち上げに関わり、事務局を務める。日本若者協議会の個人・団体会員(54団体)の合計は約4,000名。ほか、BUSINESS INSIDER JAPAN、Yahoo!ニュース個人等で取材・記事執筆も行う。

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